ラケット・ラバー最適化のための「実験」

ラケット・ラバーの最適な組み合わせの探求の成否は、情報収集と実験にかかっています。表に貼る粒高ラバーの種類(スポンジの有無、厚さ)、裏に貼る裏ソフトラバーまたは表ソフトラバーの種類(とスポンジの厚さ)、ラケットの種類と重さの全ての組み合わせについて、「ボール突き」から最終的は練習試合または実戦に至る「実験」が必要です。それには、予算と時間、実験に付き合ってくれる練習相手、真剣勝負の試合数が、実験目的に見合った「量と質」の面で必要になってきます。実現不可能な実験なのです。

①ラケットが決まっている、粒高ラバーが決まっているという条件で裏面のラバーを模索する、②ラケットと裏面ラバーが決まっている条件で粒高ラバーを決める、のどちらかが多いパターンです。③粒高ラバーと裏面ラバーが決まっている条件でラケットを変えるのは、結構大変です。「ラケットは一生もの」と考える選手も多いと思います。ただ、卓球の場合、ラケットとラバーの価格があまり変わらないので、ラケットも変えることは可能ですが、表面(おもてめん)のラバーも裏面のラバーもラケットの形に合わせなければならないので、やはりハードルは高いのです。さらに、シニアの10年~20年の場合、ラケットを握る(指で操作する)、振る、動く能力が変わるので最適なラケット、ラバーの重さが変わります。さらに懐具合も大きく変わるのでとても厄介なのです。

ラケット本体、表面(おもてめん)の粒高ラバー、裏面の裏ソフトラバーの組み合わせの最適化が必要

私がペン粒を始めたころは、「幻守」という圧倒的な人気を誇るラケットがあったので、とりあえずラケットは固定。

ラバーは、TSP(VICTAS)のカール(CURL)シリーズから選ぶか、外国(主にドイツ製)のラバーから選ぶかです。後者については、ワールドラバーマーケット(WRM)がyoutubeで毎日のように用具や技術のデモンストレーションをやっていて、参考になりました。粒高については、シーザーさんやガネさんが、様々なラバーとラケットでグッチーさんのドライブを受けるデモをやって下さったので参考にしました。ラケットは「幻守」、表面には「Superwall」、裏面にはテナジー05(厚か特厚)で始め、しばらくして、ラケットを「幻守L」に変えたのは以前述べた通りです。

「東京はレベル高いんだよ」の2019年~災厄続きの2020年、2021年

東京に戻って古巣の平沼クラブに顔を出したところ、早速、「おい、高知代表、試合しよう」という声。声の主は5歳ほど上のN澤さん。全日本マスターズベスト4になったこともあるカットマンです。見事にやられました。「東京はレベル高いんだよ」と言われても反論できません。

この年、2019年の12月下旬、とある駅の濡れたホームで足を滑らせて転倒。右足首腓骨を骨折していました。リハビリが終わったのが2020年3月末。ほぼ完治でしたが、この頃、「新潟の卓球スクールで新型コロナ感染」というニュースが伝えられ卓球の試合や練習が困難になって行きました。全日本マスターズも中止になりました。仕事もテレワークに移行していきました。

10年以上様子を見ていた心臓弁膜症が放置できなくなって手術したのが2021年3月。新型コロナパンデミックの「谷間」でした。僧帽弁修復手術が成功して、最後のリハビリが7月。さすがに、翌週出場した全日本マスターズ東京予選は1回戦敗退でした。この3年間は、公私にわたって災厄続き。と同時に医療関係者の方々のありがたさを痛感した3年間でした。それにしても、医療技術の進歩やリハビリの開始の早さに驚きました。後遺症を残さずQOL(生活の質)を取り戻すという方針が、治療やリハビリに貫かれているのが有難いと思いました。

ラケット・ラバー最適化の「実験」が困難な中、新製品の発表相次ぐ

2019年~2022年にかけてラケット・ラバー最適化の実験が困難な中、ペン粒ラバーや「ペン粒に適している」ラケットの発表が相次ぎました。ラケットについては、「ペン粒レジェンド小島渡コーチ特別仕様のラケット「CROSSiSLAND【中国式】」を使ってみた」の記事でご紹介したとおりです。

WRMからの粒高ラバーの新製品の発表も相次ぎました。2020年のHelfire-X:【ヘルファイアX】性能エグすぎ!伝説級のツブ高が日本に上陸|HellFireX【卓球知恵袋】。変化量がウリでしたので、買って実験はしたのですが、攻撃性能を優先させていたので、この時期には試合用にはせず、「お蔵入り」にしました。(現在はこれをメインのラバーにしています。)

2021年にはグラスディーテックスGSが出て(卓球【GrassDtecsGS TIBHAR】ツブ高Grassを越えたGrass新発売!【卓球知恵袋】)、フォアミート打ち、ドライブがやりやすく、プッシュも速いということで、この時期の試合用にしました。

そして、エナジーウッド V2 WRBやCROSS iSLANDに貼っていました。特に、CROSSiSLANDの細めのグリップは操作性が良く、裏面には軽くて回転が良くかかるラザンターC45 2.0mmを貼ってとても気に入っていました。

試合でもそれなりの実績を上げていたつもりだったのですが、団体戦のチームメートやダブルスのパートナーからは「ミスが多い」と不評でした。確かに、以前より粒高スマッシュの凡ミスが増えたことは確かでした。「入ると思って打ったのに入らない」という、以前にはそれ程多くなかった(「よく言うよ」と言う声も無きにしも非ずですが)現象が増えてきたのです。どうやら、150g以上のラケットを使い切る腕や手首や指の力が無くなってきていたようです。

この時期、WRMさんはさらにえげつなく粒高新製品を発表してきました。リンク先は、「2024年12月のランキング(粒高/アンチ)のリスト」です。私や私のまわりで見かけただけでも、ブロック性能のMoneky、ツブ高の欲しい性能、「ほぼ全部入りのラバー」と銘打ったKamikaze、シートに粘着性のあるCONFUSION LP等々です。「付き合いきれん」と言いながらもいくつか実験はしたのですが、決定打だと感じることは出来ませんでした。私にとってのターニングポイントは皮肉な形でやってきました。

CROSSiSLAND中国式 ラケット発売記念小島コーチ講習会での発見

2024年10月12日、千葉県市原市の五井で、WRM主催の小島渡コーチ講習会が開催されました。「ワタル コジマ」から名付けられた「CROSSiSLAND」の購入者など20数名の参加がありました。福岡、岡山、大阪、京都からの参加者もいて、ペン粒愛好家の熱意、広がりは心強いものでした。小島コーチによる個別指導、グッチーさんとのゲームに加えてCROSS iSLANDのTシャツも頂けるという嬉しい講習会でした。

小島コーチが他の参加者に個別指導をなさっているのを横で見ているのもとても勉強になるので、もっと見学すべきだったと思ったのですが、実際は、他の参加者と練習したりゲームをしたりして楽しんでいました。

大阪から参加された方とオールラウンド練習をしているときのことです。ご機嫌にCROSS iSLANDを使っているときには互角で、あまり「へん粒」らしさが出ていなかったのですが、試しに持ってきたスペアラケットに変えたところ、ミスがとても少なくなり、「こっちの方が断然強いんちゃいますか」と言われたのです。小島コーチごめんなさい。これもWRMで買ったラケットと粒高ラバーだったので、「WRMさんごめんなさい」ではなかったのですが。

そのラケットは、「和の極み 蒼」に粒高一枚ラバーHelfire-X(OX)を表面に、裏面にディグニクス64の特厚を貼ったラケットでした。重さは139.5g。CROSSiSLANDの148.9gは振りきれなくなっているようです。自覚症状はないのですが、「オールラウンド練習実験」ではっきりしました。

2021年10月に知人に送ったメールに、「表は粒高1枚(Helfire-X;いやらしいラバーで攻撃も守備も可能)ですが、裏面にディグニクス64の特厚を張ってから、裏面打法の威力と安定性が格段に良くなりました。

そのまま、「和の極み蒼」を使っていても良かったのですが、表ソフトの頃に使っていたJooLa Linus 中国式(廃版)に替えて、ラバーは同じHelfire-X、裏面にディグニクス64の特厚を貼った方が速くて低いボールが出ることが分かりました。ブロック性能は「和の極み蒼」が上なのでしょう。オーバーミスも少ないかも知れません。相手によって使い分けるのが良いかもしれません。

かぶせて前に振れば何でも入る、そして特厚なのに軽い、スピードが出るということで、表の粒高OXとの打球の落差が大きくて、ますます相手がやりにくそうです。」という感想を書いていました。どうやら、GrassDtecs GSが出たので使うのを止めて、引き出しにしまいこんでいたようです。どうしてこのラケットを持ってきたのか?直前に、高田馬場のWRMの店舗に寄ったときに、チャパリータさんだったと思いますが、「打つのに適したラバーなら、Helfire-Xもいいですよ」とアドバイスをもらったような記憶があります。ディグニクス64を買った国際卓球と合わせて、「高田馬場は卓球の聖地かも。」いや、聖地は東京体育館です。

これほどペン粒用のラケットとラバーが進化して多様化すると、ある程度決め打ちして条件を絞って実験しないと仕方ない。これは、卓球の試合での回り込みフォアスマッシュと似たようなものだと、「前向きのあきらめの境地」になりつつあります。あきらめずに実験を続けてきたこれまでが「へん」と言う方もいらっしゃいますが。

2025年1月末時点の使用ラケット

本記事の中で紹介したラケット、ラバーのほとんどは、楽天市場でリーゾナブルな価格で購入できるように思います。「卓球 ラバー 商品名」や「卓球 商品名」で購入できることを確認しました。

by へん粒